モーリスミニトラベラーとは?


ミニファミリーの誕生

 1959年9月、イギリスでまったく新しい発想の庶民の車が生まれました。そうです、これが40年もの間生産続けられていたミニです。製造元であるBMC(British Motor Corporation)が持つブランドのうち、モーリスとオースチンのバッチを与えられたミニは、それぞれモーリスミニマイナーとオースチンセブン(1962年1月にオースチンミニへ改名)と名付けられました。
 
 1960年5月、デビュー当時は大人が4人乗れるサルーンのみだったボディに、早くも新しいバリエーションが増えます。全長を25mm伸ばし、後部荷室と観音開きのリアドアをつけた商用車、ミニバンです。イギリスの税金制度により、優遇されていたバンはリアサイドの窓を埋める必要があったものの、このミニバンはサルーンにはない大きな荷室を手に入れたのでした。次に送り出されたのがエステート、いわゆる乗用ワゴンタイプです。バンと同じボディにリアシートとスライド式のリアウインドウ、そして特徴的な木枠を付けたオースチンセブンカントリーマンとモーリスミニトラベラーが1960年9月に発売されました。
(オールスティールと呼ばれる木枠なしのカントリーマン&トラベラーは輸出用に61年4月、イギリス向けに62年10月に発売)
 
 その後、リア後部を荷台としたミニピックアップ(1961年4月)、サルーンボディにトランクを付けた3ボックススタイルのライレー・エルフ/ウーズレー・ホーネット、軍用車として開発されたジープタイプのミニモーク、そしてミニの名前を有名にしたミニクーパー等、たくさんの種類のミニが現在も世界中を走り回っています。

 


Mk.I トラベラー/カントリーマンの特徴

トラベラーはサルーン同様オースチンセヴン(ミニ)カントリーマンと兄弟車で、多少の違いがあるものの、基本的なところはすべて同じです。

 特徴は、なんと言っても木枠でしょう。イングリッシュオーク材で作られたこの木枠は単なる飾りでしかありませんが(お兄さんのモーリスマイナートラベラーではちゃんとボディの一部として使われていました)、ボディリアを覆うように貼り付けられたこの木枠は、一目見てトラベラー/カントリーマンとわかるほどです。

 そして次は、実用的にも非常に便利なリアドアと荷室です。ミニサルーンではトランクから室内へはアクセスできませんが、観音開きのこのリアドアは、荷物の出し入れに重宝します。さらにリアシートは現代のワゴン車のように折りたたみ、荷室を拡大することが出来ます。クッション部の後方を持ち上げる様に前へ起こし、背もたれを前に倒せば、フルフラットの荷室の出来上がり。40年前の車とは思えないくらい考えられています。

 ボディ形状が変わった以外の基本的な所、たった848ccで34馬力のエンジン、ゴムの収縮を利用したサスペンションなどは、すべてサルーンに準じます。
Mk.I トラベラー(初期型)の基本スペックはこちら。 

 ちなみに、イギリスでは「Mk.I エステートの程度のいいやつはみんな日本人が法外な値段で買ってしまう。そして残っているやつの値段はどんどん上がっていく。」と結構日本人を非難してます。もちろんショップ側は喜んでますけどね。

Mk.I トラベラー/カントリーマンの変更点

 Mk.I トラ/カンが作られた1960年から1967年10月までの間、基本は変わらないものの小さなマイナーチェンジは頻繁に行われました。その中で一番大きい変化は、1961年8月に燃料タンクが荷室内左端にあったものがバンと同じようにフロア下へ移動したもので(ボディNo.12755以降)、サルーンのマイナーチェンジとあわせて(微妙にずれてはいるけど)行われました。ちなみに、もうひとつの大きな変更、屋根に4本の筋が入ったのはボディNo.111122からで、時期ははっきり確認できませんでしたが、おそらく65年頃だと思われます。(某Mini雑誌がこの二つの変更は同時だと書いていますが、BMCのパーツカタログで見る限り時期はずれています。このことは、フラットルーフ+床下タンクという車が多く存在していることからでも、わかりますね。)
そのほかの変更点はこちら

Mk.II トラベラー/カントリーマンとクラブマンエステート

 1967年10月にミニサルーンと共にトラ/カンはMk.IIへ進化しました。エンジンは998cc、フロントグリルが角張った6角形が大きな変更点でした。
しかし工業不信のため、BMCはレイランド社と合併しBLMC(BritishLeyland Motor Corporation)となり、1969年10月に新しいミニシリーズを展開するべく、フロントエンドをまったく新しくデザインしなおしたクラブマンを発表しました。同時に、ミニサルーンはMk.IIIへと変化し、ついにモーリス/オースチンのブランド名はミニシリーズからなくなりました。
エステート系は、Mk.II カントリーマンが69年10月、トラベラーも69年11月に名前と共に生涯を終えましたが、同じボディをクラブマンが引き継ぎ、クラブマン・エステートとして約10年間生き延び、81年にすべてのエステートが永い眠りについたのです。(バンとピックアップはMk-Iと同じデザインで83年まで生産)
 
 このような歴史から見ると、トラベラー/カントリーマン(に限りませんが)の輝かしき時代はMk.Iと言えるのではないでしょうか? (決して、Mk.IIやクラブマンが嫌いな訳ではありません。あまりにも不幸な星の下で生まれたような気がしてならないのです。オーナーの方々は大切にしてあげてくださいね。)

Mk.I エステートについてのマメ知識

 


作成者:マロンパパ